セーターやマフラーなどによく使われる、カシミヤ。軽くて柔らかく、光沢も美しいので、着るだけでうっとりしてしまう上質な素材ですよね。
一方で、カシミヤはとってもデリケートな素材でもあります。「うっかり洗濯機で適当に洗って、もう二度と着られないほど縮んでしまった……」なんてことも起こります。人気が高く高価な素材なだけに、失敗したときのショックも大きいもの。
この記事では、カシミヤの洗濯で失敗しないポイントを解説します。カシミヤを長持ちさせるための、自宅のお手入れや保管方法もご紹介しますよ。
カシミヤはどんな素材?
カシミヤは、中国やモンゴルなどの山岳地帯に生息する「カシミヤヤギ」から採れる天然繊維(毛)です。
「カシミヤヤギ」の体の表面は粗い毛で覆われており、その下に柔らかいうぶ毛が生えています。このうぶ毛が、カシミヤとして流通しています。
カシミヤが高価な理由
カシミヤは「繊維の宝石」と呼ばれているほど高価な素材です。その理由は、カシミヤの希少性。
カシミヤは、1頭のカシミヤヤギから100g程度しか採ることができず、セーター1着を作るのには3〜4頭分の毛が必要になるといわれています。また、カシミヤヤギは限られた地方にしか生息しないそう。
採取できる毛の量や生息数の少なさ、さらに品質の高さから、カシミヤの価格は高いのです。
カシミヤの特徴
高価なカシミヤですが、それでも根強く人気な理由には次のような特徴があります。
- 肌触りが柔らかく、ちくちくしない
- 保温性に優れていて、暖かい
- 光沢があって美しい
- 軽い
同じ動物繊維であるウールと比べても、カシミヤはなめらかでふんわりとした肌触りで、着心地も格別といわれています。
一方で、カシミヤの注意したい点は次の二つ。
- 毛羽立ちやすい
- 虫食いが起こりやすい
カシミヤは繊維の特性上、毛羽立ちやすく、毛玉もできやすいため、雑に扱うとなめらかな風合いを損ねてしまいがちです。
また、カシミヤは天然繊維で虫に食べられやすい素材。長く着るためには適切なお手入れや保管をすることが重要になってきます。
カシミヤは自宅で洗濯しても大丈夫?
結論として、カシミヤでできた衣類の中には、自宅で洗濯することができるものもあります。しかし、デリケートなカシミヤは洗濯に失敗するリスクも大きいため、慎重に行う必要があります。
カシミヤ洗濯の失敗例
洗うと生地が縮む・ゴワゴワする
カシミヤのような動物毛は、水に濡れた状態で擦られたり、洗濯機の力がかかったりすると「フェルト化」という現象が起こり、文字通りフェルトのように縮んでしまいます。
しかも、「フェルト化」した繊維は回復不可能。大切なカシミヤの衣類がゴワゴワして固くなってしまい、なめらかな風合いがもう戻らないなんて悲しいことも……。
ハンガーに吊るして干してしまい、形崩れする
カシミヤの衣類を洗って干すときにハンガーに吊るすと、重力で水分が下の方に移動し、重みでカシミヤが伸びてしまいます。また、ハンガーの肩の跡がくっきり残ってしまうことも。
形崩れしたカシミヤの衣類も、元の形に戻すのは困難です。
失敗したくない場合はクリーニングへ
大切なカシミヤを洗いたい方や、洗濯による失敗を避けたい方は、自己流でなんとかしようとせずに、クリーニングに任せるようにしましょう。
クリーニングでは、洗濯表示や衣類の状態を見て、カシミヤが傷みにくい適切な方法を判断して洗ってくれます。縮んだり形崩れするリスクを避けることができますよ。
カシミヤを自宅で洗濯する方法
カシミヤの洗濯には失敗が多いとはいえ、毎回クリーニングに出すのはちょっと大変……。自宅で洗濯したいケースもありますよね。
「リスクはわかったけど、それでもカシミヤを自宅で洗濯したい!」という方のために、自宅で洗濯する手順とポイントをまとめました。
洗濯表示をチェックする
まずは、洗いたいカシミヤの洗濯表示を確認して、自宅で洗濯できるかどうかを調べましょう。
次のような洗濯表示があれば、自宅での洗濯OKです。
ちなみに、デリケートなカシミヤは、洗濯表示でOKであっても洗濯機で洗うのはおすすめしません。洗濯機で洗うと、繊維が絡まって縮んでしまう「フェルト化」が起こるリスクが高くなります。カシミヤの風合いを守るためには、必ず手洗いするようにしてください。
また、次の洗濯表示がある場合には自宅で洗うのはNG。クリーニングに出すようにしてください。
手洗いで洗う
カシミヤを洗うときのポイントは、「おしゃれ着用洗剤を使うこと」「手洗いで洗うこと」の2つです。
おしゃれ着用洗剤には、衣類を保護する成分が多く配合されています。そのため、デリケートなカシミヤも傷みにくいです。
また、手洗いで慎重に洗うことで、カシミヤが縮んでしまうのを防ぐことができます。
用意するもの
- 洗濯ネット
- 洗面台(風呂桶でもOK)
- 30℃以下の水(水温が高いと縮みやすくなるため、お湯はNG)
- おしゃれ着用洗剤
- 柔軟剤
洗う手順
- カシミヤの衣類をきれいにたたみ、ぴったりサイズの洗濯ネットに入れます。
- 洗面台に、水と規定量のおしゃれ着用洗剤を入れて、手でかき混ぜ、洗剤水を作ります。
- 1.を2.の中に沈めて、手でやさしく「沈める」「浮かせる」を2〜3回繰り返して洗います。
- 5分ほどつけ置きします。汚れが気になる場合は10分ほどつけ置きしましょう。
- 洗剤水を捨てて、洗濯ネットに入れたまま押して絞ります。
- 洗面台に水を張り、手でやさしく「沈める」「浮かせる」を4~5回繰り返してすすぎます。水を替えて、もう一度すすぎます。柔軟剤を使うときは、2回目のすすぎ時に入れるようにしましょう。
- カシミヤの衣類を洗濯ネットに入れたまま、洗濯機に入れて脱水します。洗濯機の一番弱い設定(「弱脱水」など)で30秒〜1分と、短い時間で脱水しましょう。
平干しで干す
洗った後のカシミヤは、必ず平干しで干すようにしましょう。ハンガーに吊るして干すと、肩にハンガーの跡がついたり、生地が伸びてしまいます。
平干しするときには「平干しネット」を使うと、風通しよく乾かすことができるのでベストです。100円ショップなどでも販売しているので、一つ持っておくと便利ですよ。
平干しネットを用意できないときは、床にバスタオルを敷いて干す方法もあります。
- カシミヤの衣類が収まる大きさになるよう、床にバスタオルを数枚敷く
- 1.の上に洗ったカシミヤの衣類を広げて置き、形を整える
- 窓を開ける、サーキュレーターを当てるなどして、風通しをよくして干す
- 半日ほどで裏返して、完全に乾かす
ちなみに、カシミヤの衣類を乾燥機にかけるのは絶対にやめましょう。乾燥機の熱が加わった状態で擦れると、カシミヤが縮んでしまいます。せっかく慎重に洗ったのに、乾燥で大失敗……ということのないようにしてくださいね。
カシミヤのお手入れと保管方法
カシミヤを長く着るためには、洗濯方法だけでなく普段のお手入れに気をつけることも大切。
自宅でできるお手入れ方法や、長期保管のコツをご紹介します。
カシミヤのお手入れのポイント
カシミヤを着る冬のシーズンになったら、普段のしまい方や、着用後のお手入れに気を使うようにしましょう。
たたんで保管する
カシミヤの衣類は、きれいにたたんで保管しましょう。
ハンガーに吊るして保管するのはNGです。衣類の重みで裾や袖が伸びてしまったり、肩にハンガーの跡がついてしまいます。
着用後はブラッシングでホコリや食べ物のカスを落とす
頻繁に洗うことのできないカシミヤは、ホコリや汚れをこまめに取り除いて、蓄積させないことが大切。着用後は、洋服用ブラシを使ってブラッシングするようにしましょう。
洋服用ブラシは、柔らかい動物毛のものを選びましょう。動物毛のブラシの中でも、特に柔らかい馬毛ブラシがおすすめ。
合成繊維のブラシだと、静電気が発生しやすくなったり、カシミヤの繊維に引っ掛けて傷めてしまったりする恐れがあります。
1〜2日おきに着用する
お気に入りの衣類は毎日身につけたくなるものですが、連続して着用するのは避けましょう。頻繁に着ると、形崩れや毛玉が発生しやすくなってしまいます。
一度着たら1〜2日は着ないなどして、カシミヤを休ませましょう。
毛玉ができたら取り除く
毛玉ができてしまったら、きれいに着るためにも毛玉を取り除くようにしましょう。毛玉取りブラシか、毛玉取り機を使うのがおすすめです。
ちなみに、ハサミやカミソリで毛玉を切り取ったり、指で毛玉を引きちぎるのはNG!繊維の傷みに繋がります。
毛玉の取り方について詳しくは、毛玉の取り方の注意点と、予防するためのポイントも参考にしてくださいね。
カシミヤを長期保管するときのポイント
カシミヤは天然繊維(毛)で、虫(衣類害虫)に食べられやすい素材。長期保管するときには虫食いを予防することが大切です。
長期保管前にクリーニングで汚れを落とす
衣類害虫のエサは、食べ物のカスや皮脂汚れ、髪の毛などさまざまです。保管する前にこうした汚れをしっかり落としておかないと、虫食いが起こる可能性が高くなります。
実は、自宅でカシミヤを洗うときは、失敗を防ぐために優しく洗う必要があるので、しっかり汚れを落とすのには限界があります。そのため、長期保管する前にクリーニングに出すのがおすすめです。
防虫剤と一緒に保管する
防虫剤を正しく使えば、カシミヤの虫食いを予防する効果があります。
防虫剤の種類によって適切な個数や使い方は異なるので、パッケージ裏の使い方を守るようにしましょう。また、防虫効果を最大限に発揮させるためにも、収納ケースなどの密閉されたところに保管するのがおすすめです。
虫食い予防について詳しく知りたい方は、虫食いの原因と予防方法も参考にしてくださいね。
カシミヤは、正しい洗濯やお手入れで長く愛用できる
自宅でカシミヤを洗濯する際の手順や、お手入れ方法をご紹介しました。
カシミヤは洗濯の失敗が起こりやすい素材。それでも自宅で洗いたい場合は、「おしゃれ着用洗剤」を使って「優しく手洗い」することがポイントです。乾かすときには平干しすることで、形崩れを防ぐことができます。洗濯機で洗ったり、乾燥機にかけたり、ハンガーで吊るし干しするのは、形崩れや縮みに繋がるのでやめましょう
また、カシミヤを長く着るためには、普段のお手入れも大切。着用後はブラッシングでホコリを落としたり、着用間隔をあけたりして、カシミヤが劣化するのを防ぎましょう。
長期保管時には虫食いを防ぐために、汚れをしっかり落としたり、防虫剤と一緒に保管したりするとよいです。自宅の洗濯でカシミヤの汚れを落としきるのは限界があるため、長期保管前やシーズン中に1回はクリーニングで汚れを落とすようにしてくださいね。