ふとんのクリーニングにおいて、ふとんに住みつくダニは天敵そのもの。お客さまによりよいサービスを提供するために、ふとんリネット担当の魚森敦史は「ダニについてもっと知りたい」とかねてから考えていました。そこで、実現したのがダニ博士として知られるアペックス産業株式会社 代表取締役社長・元木貢(もとき みつぐ)さんとの対談です。
対談前編となる今回は、元木さんがダニに興味を持ったきっかけやさまざまなダニの種類についてお話をうかがいました。
目次
誰も知らない“ペストコントロール”という仕事に興味がわいた
魚森敦史(以下、魚森):今回は対談できる機会をいただけて、本当に嬉しいです!まずは、元木さんが現在どのようなお仕事をなさっているのか教えていただけますか。
元木貢さん(以下、元木さん):現在はアペックス産業株式会社という会社で、ペストコントロールを行っています。ペストコントロールとは、ダニはもちろんネズミやシロアリなどを人間に被害がないように、駆除や制御をすることです。
ペストコントロールという言葉を広めたのは私の父です。昭和24年に船乗りだった父が進駐軍の通訳をした際、米軍の昆虫学者から教えてもらったペストコントロールの仕事が面白そうだったので指導してもらったそうです。その翌年にこの会社ができました。
病気のペストはドイツ語ですが、英語のペストとは「厄介者」という意味。人に危害を加えている生物を対象にしているのが、我々の仕事です。
魚森:お父さまのお仕事を継がれたということなんですね。
元木さん:小さい頃から父の仕事を見てきて、学生のときも父の会社でアルバイトして、この仕事が面白いなと思ったんですよね。まだ、誰も知らない仕事だし、人の役に立つし。
でも、僕が通っていたのは商学部。だから、ペストコントロールのことは何も知らなかった。だから、東京大学の医科学研究所というところに行って、佐々学教授のもとで研究生として勉強したんです。
ダニと関わるきっかけを作ってくれた2つの論文
魚森:人に危害を加える厄介者のなかでも、ダニに興味を持ったのはなぜですか?
元木さん:2つの論文を作ったのがきっかけです。
1つは小児科の先生と一緒に、ぜんそく患者のお子さん3人がいるご家庭で調査した共同研究でした。ぜんそくを治すには、薬だけではダメで、ふとんの中にあるダニのアレルゲンを減らすことが必要です。
普通のふとんだと、ダニのえさである人のフケとか垢がふとんの中にたくさん入ってしまって、ダニがその中で生活できるようになるんです。ふとん20gの中に800匹入れると、4カ月で40万匹くらいになるんですよ。
魚森:ええーー!? そんなに増えるんですか??
元木さん:しかも、ダニの死骸やフンもアレルゲンになって大変なことになるですよ。
魚森:……こ、怖いですね、それ。
元木さん:だからこの調査では、今までの古いふとんを全部交換して、ふとんを防ダニふとんという高密度の繊維(0.05ミリぐらい)に変えました。畳やカーペットもコルクの床に全部変えて、ダニのアレルゲン量を毎月調べました。
小児科の先生にぜんそくの症状の診断をしてもらって、改善しているかどうかを4年にわたって調べてもらったんです。そしたら、症状もよくなり、効果が得られました。
魚森:やはり、ふとんや畳やカーペットがダニの温床になっていたってことなんですね。
元木さん:もう一つの論文は、小中学校のダニの数を調べたものです。
学校では、学校保健安全法で1平米あたりダニは100匹以下にしなさいという基準があります。でも、実際調べた人がいなくて。僕が29校の小中学校のふとん、床、カーペットとかのホコリを集めてダニの数を調べてみたんです。そしたら、29校のうち5校で100匹を超えていたところがあった。ところが、世界保健機関(WHO)の基準はもっと厳しくて、その基準に当てはめると29校のうち27校が基準オーバーだったんです。そんなことを研究しましたね。
魚森:学校にもたくさんダニがいるんですね……
元木さん:あと、日本ダニ学会にも20代の頃から参加していました。2014年には、世界中からダニ学者を呼んで、京都で国際学会をおこなったりしています。僕とダニとの付き合いはそんな感じですかね。
1800種類のダニのうち、本当に嫌なのは10〜20種類くらい
魚森:ダニとの関わりが増えてくると、ダニが好きになったりとかするんですか……?
元木さん:日本にはダニが1800種類ぐらいいるんです。そのうちの嫌なのはせいぜい10〜20ぐらいですね。
魚森:え!? たったそれだけなんですか??
元木さん:お家の中にいるダニでぜんそくを引き起こす「ヒョウヒダニ」。これは嫌ですね。「ツツガムシ」というダニは、万葉集の時代から知られているダニの一種です。防人(さきもり)がツツガムシ病にかかって、多くの人が亡くなって帰ってこなかったという記録が残っているほど。あいさつ文で「つつがなくお暮らしですか」とか言いますよね。それは「ツツガムシ病にかからずに元気にお暮らしですか」ということなんです。
魚森:私たちが何気なく使っているあいさつにもダニが影響しているとは、驚きです。
元木さん:あと、今「マダニ」が問題になっています。2013年にマダニが引き起こす「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」という病気が日本で初めて発見されて、西日本で人が亡くなったんです。野原で刺されたようで、犬も刺されるし、ダニ脳炎とかいろんな病気も引き起こします。
皮膚について「かいせん(疥癬)」という病気を引き起こす「ヒゼンダニ」というダニは高齢者のいる施設で蔓延することが多い。ネズミがいれば「イエダニ」も出てくるし、鳥がいれば「トリサシダニ」も出てきて人を吸血します。
「ツメダニ」は、刺されるとアレルギーを起こすことが知られています。その場ではすぐかゆくならず、半日か1日後にかゆくなる。だからお家で刺されたのに、原因がわからないということもあるんですよね。
魚森:こういう話をうかがうと、ダニはやっぱり厄介者だなぁと思ってしまうのですが……
元木さん:そういう人間に悪いダニはいるんですけど、ほとんどのダニが人には関係なく生活しているんです。
例えば、土の中にいる「ササラダニ」は、落ち葉を食べて環境的にものすごく重要な役割をしていて、好きなダニのひとつです。
水の中にもダニはいます。プールの底には「ミズダニ」というダニがいる。プールには塩素が入っていると思われるけど、実はダニはどんなに環境が悪くなっても死んだふりをして生きることができるんです。仮死状態で何万年も生きることができるんですよ。
魚森:へー、水の中にもダニがいるなんて知らなかったです。
元木さん:「サカモリコイタダニ」という変な名前のダニは、断崖絶壁の潮風が吹きつけるような環境の悪いところにいたんですよ。なのに、同じダニがデパートの屋上にいた。風で運ばれてくるわけです。他の生き物がいるところでは、ダニのえさになるものはみんな食べられてしまう。だから、他の生き物が生きていけないような劣悪な環境のところに住み着くんですよね。
魚森:劣悪な環境だからこそ生き抜けるダニもいるんですね。それはすごい。
元木さん:人間にとって良い働きをしてくれるダニもいます。ミモレットというチーズは、チーズの周りに「チーズコナダニ」を植え付けて美味しくしています。
一方で、食品に影響を与える「コナダニ」というダニは、唐辛子の味を変えてしまいます。湿度が70%以上、水分含有量が14%を超えると繁殖するので、締め切った家の中でも繁殖するんですよ。
「カブリダニ」は殺虫剤として売られています。カブリダニはハダニの天敵なので、それを薬として生物農薬として使っているんですよ。
魚森:本当に我々の身近なところにダニがたくさん存在しているんですね。
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