久しぶりにクローゼットから衣類を出してきたら、カビが生えていた……という経験はありませんか? 衣類のカビは一度生えるとショック。もう絶対に発生させたくないですよね。
また、生えてくるカビにも白や黒などさまざまな色がありますよね。色によって対策に違いはあるのでしょうか?
今回は、カビの色の種類や衣類のカビ対策について、株式会社衛生微生物研究センターの李 新一さんと、衣類ケアについてリネットのお洗濯アンバサダー近藤高史さんに、それぞれ教えてもらいました。
この記事を監修した人
株式会社衛生微生物研究センター 李 新一さん
株式会社衛生微生物研究センター副所長。
生活環境における細菌やカビの調査を行うほか、化粧品や日用品をはじめとする各種工業製品の微生物トラブルの調査や、抗菌・抗カビ効果の検証も行っている。
この記事を監修した人
リネットお洗濯アドバイザー 近藤高史
クリーニング歴20年以上のクリーニング師。クリーニング会社の工場長を経て、2014年よりリネットの品質管理部門の現場責任者。メディア出演多数。趣味はランニング大会に出ること。
「クリーニングのプロの視点から、衣類をずっとキレイに保てるお洗濯やお手入れの方法をご紹介します!」
目次
衣類にカビが発生する原因は、空気中のカビと、汚れ×水分×気温の3つの条件
まずは、株式会社衛生微生物研究センターの李 新一さんに、衣類にカビが発生する原因を伺いました。
李さん:室内の空気1m³(1m×1m×1m)には、カビが数個から数千個浮遊しています。その空気中に浮遊しているカビが服に付着することが理由です。
ただ、付着しただけではカビは目に見えないので、“カビが発生した”というのは、肉眼で見えるくらいカビが発育した状態ということになります。
李さん:カビが発生しやすい条件は、気温20〜30℃、最低限必要な湿度は70〜80%と言われていますが、気温や湿度の条件がそろうだけでカビが発生するわけではありません。
汚れ×水分×気温の3つの条件がそろったときにカビが発生します。
李さん:空気中に浮遊しているカビが衣類に付着するので、身の回りにいるカビが発生しやすいとは言えますが、衣類を好むということではないですね。
李さん:土に近い場所に比べると、高層階の部屋の空気中のカビは多少は少ないと思います。
ただ、空気中にカビはいるので条件がそろえばカビが生えますし、高層階の部屋はカビが生えにくいというレベルではないですね。
服のカビの色は違っても対策は同じ
引き続き、株式会社衛生微生物研究センターの李 新一さんに、衣類のカビの種類(色の違い)や洗濯しても落としにくいカビの種類などを伺いました。
李さん:白カビ、黒カビというのは、白く見えるから白カビ、黒く見えるから黒カビと呼んでいるだけで、正式名称ではありません。
例えば、青色や緑色のカビは、発育の段階によっては、白く見えるものもあります。
顕微鏡で見ない限りは、それが何の種類のカビかははっきりとは見分けられません。
李さん:黒く見えるカビの方が発育が進んでいるということが考えられます。カビは発育が進むと繊維の奥まで根を張るため、落ちにくいということがあるでしょう。
いずれにせよ、カビが目で見える段階というのはかなり発育が進んでいる状態です。カビは一度生えてしまうと完全に取り除くのは難しく、取り除いたように見えても繊維の奥まで入り込んでいることもあります。
まずは、カビを発生させないことが大切です。カビの色が違っても、対策は同じです。
李さん:カビにも臭いが発生しますが、一般的に言われている“カビ臭い”という臭いは、雑菌の臭いだと思います。
1日も経てば洗濯物から生乾きの臭いが発生した経験はあると思いますが、カビはかなり発育が進まないと臭いません。また、実際にその臭いがカビの臭いかはわからないと思いますね。
服にカビを発生させないための対策3つ
李さん:カビは、汚れ×水分×気温の3つの条件がそろったときに発生します。この条件を取り除くことが対策の基本です。
気温はコントロールしにくいので、とくに汚れと水分に注意するといいでしょう。カビの色が違っても対策は同じになります。
服のカビ対策1:汚れはしっかり落とす。粉末洗剤を使って、すすぎ2回がおすすめ
李さん:汚れの中でもカビが好むのは、タンパク質と糖質。飲み物や食べ物、皮脂の汚れなどがついている服はカビの発生リスクを高めるので気をつけましょう。
一度袖を通した服は、見た目は汚れていなくても、保管する前は洗った方がいいでしょう。
また、カビはもともと土の中が生息場所なので、土汚れはカビの大好物。泥のついた衣類や靴下などは、きれいに洗い落としてください。
リネット近藤:衣類の汚れを落としたいなら、皮脂汚れに強い、弱アルカリ性の粉末洗剤を使うのがおすすめです。液体洗剤やキューブ型洗剤は中性のものが多く、汚れを落とす力が弱いためです。
また、すすぎ1回モードや時短モードだと汚れがしっかり落ちないので、すすぎは2回するようにしましょう。
リネット近藤:ただ、家庭用の洗剤や洗濯機では取りきれない汚れもあります。衣替えなど長期間保管する前には、お気に入りの衣類はクリーニングをおすすめします。
リネットのクリーニングでは専用の溶剤とたっぷりの水で洗うので、汚れをきれいに落としてくれますよ。
服のカビ対策2:洗濯物はしっかり乾かす。衣替えは晴れの日に
李さん:衣類のカビ対策で特に気をつけたいのが、水分です。
汗や雨に濡れた衣類をよく乾かさずにしまっていたり、生乾きの衣類を密閉した収納ケースにしまっていませんか? 曇りの日などに洗濯して、取り込んだときに服がしっとりしているなと感じたら湿気を含んでいるので気をつけてください。
湿気を含んだまま密閉した場所に保管していると、水分が蒸発せずに湿った状態が続くので、カビが発生しやすくなります。
李さん:服が多少湿っていても、風通しのいいところに吊るしていれば自然と乾いてカビが発生することも少ないと思いますが、衣替えのときなど長期間保管する衣類は、しっかり乾かしてから保管しましょう。
服のカビ対策3:保管環境も大切。クローゼット・押し入れは定期的に換気をして
リネット近藤:保管環境も湿気をこもらせない工夫が大切です。湿度が高くなるとカビが発生するリスクが高まるため、週に1回を目安に換気するのが理想です。
除湿剤を使ったり、扇風機の風を数分程度当てて湿気を取るのもいいでしょう。
リネットでは、お洋服を送るだけでクリーニングと保管もしてくれる「リネットプレミアムクローク」という保管サービスも。最適な環境でお洋服を保管したい方やクローゼットを広々使いたい方などは、検討してみては?
黒カビの取り方はつけおき洗いか、クリーニングへ
李さん:酸素系漂白剤でつけおきしてから、洗うといいでしょう。ただ、黒カビは繊維の奥まで入り込んでいてかなり落としにくくなっています。洗濯して落ちたように見えても実際には残っていて、時間が経つとカビが発生してしまうこともあります。
繰り返しになりますが、まずはカビを発生させないよう予防を徹底してください!
リネット近藤:黒カビの場合は、カビによって生地が既に傷んでいることもあるため、自宅で対処しようとするとさらに衣類が傷んでしまうことも。そのため、なるべくクリーニング店に相談するのがおすすめです。
ただし、カビや生地の状態によっては落とせない場合もあるので、やはりカビを発生させない予防が大切です。
カビを発生させないためには汚れを落として、湿気を防いで保管しよう
衣類のカビの原因や色の種類、カビ対策について紹介してきました。次のポイントを守ることで、カビを撃退することができます。
- カビは落ちにくい。発生させない予防策を
- 泥汚れや食べ物汚れ、皮脂汚れは注意
- 汚れを落とし、しっかり乾かして保管する
ご紹介した洗濯のテクニックや、クリーニングも上手に使って、カビを防ぎましょう!
撮影/sono スタイリング/伊賀瀬